東京司法書士会三多摩支会
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■第1回裁判事務教室レポート

2005裁判事務教室 観戦記!(調布支部 中野浩一)

平成17年9月9日、午後6時、立川市女性総合センターアイム5階・第3会議室は、燃えていた。もちろん火事ではない。そこに集まった、ゆうに50名をこえる司法書士がその情熱を発揚し、熱い裁判実務談義を展開していたのだ。『裁判実務に強くなるコツはこれだ!!書籍には載っていない裁判実務』と銘打った今回の企画は、前年までの訴状作成を中心とした裁判事務教室とはうって変わって、参加者のフリートークが中心だ。ひたすら聞くもよし、経験談を語るもまたよし、裁判事務初心者からベテランまで実に活発な発言があいつぎ、予定された3時間はあっという間に過ぎ去った。それはまさに戦いの記録であった。

前半は、予め参加者から寄せられた質問に対する検討からはじまった。強制執行のための差押え財産をいかにして発見するのか、訴訟相手の代理人として弁護士が出てきたときの心がまえなど、裁判事務を始めれば誰しも心当たりのある、すぐに聞いてみたい内容だ。間髪を入れずに経験者が発言する。「紛争の経過に必要な事実がかくされている」、「会社なら取引口座、賃貸借なら賃料の振込口座などまずは身近なところから検索」、「相手所有の不動産があればその後の交渉も余裕が持てる」など、自分も同じ苦労をした実感がこもる。「代理人に振り回されずに事実をよく確認して理論を構成し、誠実な立証を試みることが大切」「むしろ相手に弁護士がついてくれた方が、当事者同士の感情的な対立から開放され妥当な和解が成立しやすく、職務も楽だ」等のアドバイスは、実際の紛争現場を経験した先輩からの深い思想も感じられる。

遺言による所有権移転登記(遺贈)が任意にできない場合で、相続人でない受遺者からの登記請求訴訟の是非については、物件特定等登記実務の論点検証からはじまり、裁判相手としての当事者の検討、登記請求訴訟として維持できるかどうかも含めて、最終手段としての裁判手続だ、との認識を再度確認。遺言執行者の選任申立に関しては、実体法上の争いがある場合、家裁は選任に消極的な場合があるのではないか、などの情報も出る。質問者の釈明には、依頼者とともに苦悩している実態が現われる。真剣である。

さらに債権執行についての質問には、差押債権額の振り分けの指針、差押債権目録の記載要領から、執行文の数通付与申し立てやその理由、過剰執行でない旨の確認も必要など次々と着目点が語られる。その後明渡訴訟、過払い金返還訴訟などの質問内容が検討され、質問者は質問した次元を大きく超えた経験者の執務姿勢とその思想を提示され、その様子に私は圧倒されながら、そしてじっくり聞いて紛争の現場を追体験したのであった。

しばらくの休憩後、後半会場は爆発した。もちろんテロ攻撃ではない。テーマにとらわれずに裁判実務の経験談を話し合ったのだが、各自実務で思ったこと感じたことが爆発した。とにかく参加者の熱い思いが語られる。債務整理での方針選択、依頼者との関係、報酬や法律扶助の話。初めて聞く初心者会員も現場のイメージがわいていく。実際の法廷でのあれこれもでてくる。裁判官の訴訟指揮では次回までの宿題や立証活動の指示も出る。

ドキドキするけど言ってくれればやりやすい部分も多い。書記官も親切だ。理論構成のヒントもくれる。今度訴訟の相談者がきたらイッチョやってやるかと勇気が出る。でも頼りすぎは禁物だ。結果責任は我々が負うのだ。依頼者に対してよく説明し、選択肢を提示して、本人の選択と意思を尊重しようとの発言は、さまざまな事例で繰り返し語られる。失敗談もいい。裁判所に提出する訴状も書証も全部一緒に閉じてしまった、副本に押印を忘れたといった話から、代理人として弁済を受領したが、弁済金額をよく確認しなかったら代理権の範囲をもうちょっとで超えそうだった、個人民事再生の手続き中に、申立本人が転職した事実を司法書士として確認できずに裁判所にひたすら弁明など、いろいろ出てくる。再生手続き中に申立人が離婚をしたいと言い出したが、財産目録や弁済計画に多大な影響があり、手続が頓挫しかねないので、離婚を思いとどまるように本人を説得したなど、聞いてびっくり、生の戦いの記憶が語られる。

明日は我が身の経験談だ。通常訴訟、債務整理など民事紛争という一種ぎすぎすした内容なのだが、聞いていて心地よい。参加者のすがすがしい正義感と同職へのやさしさというフィルター付の空気清浄機が現在稼動中である。いつのまにか時計の針は、午後9時を大きく回っている。会場には話し足りないという熱気が漂うなか、三多摩支会長が搾り出すように閉会の挨拶をする。「皆さんありがとう。このような、初心にかえったような気持ち、事務所を開設して実務もままならない時の不安、そして希望がよみがえる。また集まろう。」その目にはきらりと光るものがある。

簡裁代理権がきっかけとなって、司法書士の新しい裁判実務が今、市民社会に芽吹いている。その道はときに険しく、周辺環境は厳しい。ひとりでは戦えない時もある。しかし我々には仲間がいる。皆の裁判実務への情熱は、厚い壁をも貫く剣である。私は大真面目で思う。自分ができることから一歩一歩進もう。今日のような場に参加して初心を忘れないということは、依頼者の苦悩と同じ目線で向き合うことにつながるだろう。そこから依頼者の信頼やひいては市民社会からの支持も生れるはずだ。そして多少の失敗も恐れない。なぜなら、次回裁判事務教室の大切なネタになるからだ。会場を出てふと夜空を見上げると星がまたたき、自分の小ささを感じたが同時に変な気負いも消えた。背伸びする必要はない。これでいい。司法書士という職業にロマンを抱いて、私は帰途についたのであった。